第53回研究会の記念講演抄録

2024/10/21

研究集会・研究会

 第53回定例研究会(10月27日・東大本郷キャンパス、Zoom会議室併用)の記念講演の抄録です。開催要領と参加申し込みはこちらのページをごらんください。

帝銀事件と731部隊―甲斐捜査手記と一般隊員を中心に―

山田 朗氏(明治大学平和教育登戸研究所資料館長)

 1948(昭和23)年1月26日に発生した帝銀事件は、毒物(青酸化合物)を飲まされた16名中12名が死亡するという日本犯罪史上、稀に見る残虐な事件であった。警視庁の捜査陣は、旧日本陸軍の研究所・部隊関係者を捜査するうちに、結果的に陸軍の化学戦(毒ガス戦)関係、生物戦(細菌戦)関係、謀略戦関係のさまざまな組織と人脈の全貌をほぼ把握することになる。

 捜査陣が最も多くの情報を集めたのは、731部隊と登戸研究所(九研)であった。とりわけ、731部隊の石井四郎や登戸研究所の毒物関係者の証言は捜査の流れを左右したと言ってよい。

 本報告では、これらの組織の幹部の証言だけでなく、731部隊や登戸研究所の一般隊員からの証言を多数記録した警視庁捜査1課係長・甲斐文助が記録した『甲斐捜査手記』を分析することで、捜査の流れ(焦点の変化)、捜査陣がつかんだ731部隊をはじめとする日本軍の秘密戦部隊の実態(毒物を使った謀殺、「マルタ」の処分など)と戦後の免責工作について明らかにする。