第26回戦争と医学医療研究会総会決議
政府の管理下に学術の軍事動員を企図する日本学術会議「法人化」に反対する
2025年3月23日、大阪
戦争と医学医療研究会(以下戦医研)は、日本学術会議登録の研究会で、2000年に発足した。日中戦争では、多くの医師医学者が戦争を遂行する政権に協力し、731部隊をはじめ医の倫理に反する人体実験や生物兵器研究を行った。戦医研は、その実態を解明し歴史の教訓を学び、現在・未来の医学倫理確立に資することを目的の一つとしている。戦医研は、史実に基づき明らかにしてきた歴史に温ね、日本学術会議を法人化する法案(以下新法案)に反対する。
日本学術会議(以下学術会議)を法人化する新たな日本学術会議法案が2025年3月7日閣議決定され、本国会に上程された。2020 年、菅首相による学術会議会員の「任命拒否」にたいし、学問の自由と独立を踏みにじる暴挙として広く抗議の声明が上がった。政権や自民党は任命拒否の理由を説明することなく、学術会議の在り方に問題があるかのように議論をすり替え、もちだしたのが法人化であった。法人化は学術会議の独立性を高めるためと説明しているが、新法案は学問の自由と独立を奪い、政権に従属させ軍事研究に駆り出す内容になっている。
学術会議は、前身である学術研究会議が政府の統制下で戦争に協力した過ちへの反省を原点とし、これまで3回にわたって軍事研究を行わない声明を発出してきた(1950年、1967年、2017年)。新法案では、この学術会議の発足当時の理念が削除されている。
「学問の自由」については、学術会議は国の機関でありながら、憲法23条に基づき政府から独立した機関として運営されてきた。新法案では、内閣総理大臣が学術会議外から任命する監事、および日本学術会議評価委員会、学術会議外のメンバーで構成される運営助言委員会、選定助言委員会が設置され、学術会議や会長はその意見を聴かなければならない。守秘義務が職を退いた後まで課され、総理大臣は学術会議に対し立ち入り検査の権限を持ち罰則も設けられている。
また新法による新学術会議への移行期には、総理大臣が任命する設立委員会と会長代行が運営にあたり、会長は候補者選考委員の任命について総理大臣の指名する者と協議が必要とされている。
これらは、学問の自由と学術会議の独立性を否定するものである。2022年の安保3文書に沿った軍学共同の推進や、軍事研究に反対する日本学術会議への自民党・一部マスコミの執拗な攻撃、また(学術会議の3つの)声明の破棄を補助金供与の条件とすべきと言う国会質疑等を併せ考えれば、学術を政権の管理下におき軍事研究へ動員する意図が明白である。
戦医研は、新法案に反対する。日本学術会議に対し、毅然とした態度で政府に臨み、設立の原点と独立性を堅持することを要望する。政府に対し、憲法で謳われている学問の自由、民主主義、戦争放棄を遵守し、新法案を取り下げることを要望する。国会に対し、活発な議論を通し廃案にすることを要望する。