日本学術会議の議事録に関する声明

2016/11/23

声明・決議・要請

 日本学術会議の議事録に関する声明


 15 年戦争と日本の医学医療研究会(Research Society for 15 years War and Japanese Medical Science and Service)は 15 年戦争をめぐる日本の医学医療界の責任の解明を目的として、2000 年 6 月 17 日に、医師・医学者を主とする全国的な有志により設立されました。本会はその目的達成のために、①15 年戦争と日本の医学医療に関する史実・証言の収集調査とその研究、②年 2~3 回の研究会の開催、③15 年戦争と日本の医学医療研究会会誌(Journal of Research Society for 15 years War and Japanese Medical Science and Service)の発行などの事業を行ってきました(詳細:本会ホームページ url: http://war-medicine-ethics.com/)。


 最近の医学・医療の進歩発展は著しく、人類は新たな倫理的問題に直面しています。医学者・医師も自らの問題としてその解決を求められています。その取り組みに際しては、医学・医療のこれまでの歩みを真摯に振り返ることは不可欠です。


 しかし、当時の資料の焼却、散逸と、残された資料の「未公開」「隠蔽」のために、その全貌は未だに明らかではなく、検証は容易ではありません。731 部隊と細菌戦に関しては、当時日本を占領したGHQ(連合軍総司令部)は、関係した多くの医学者・医師に対する訊問をしましたが、研究成果を独占するために戦争犯罪を不問とする取引をしました。このような経緯により、日本の医学会・医師会では「真相は不明」「解決済み」あるいは「タブー」とされ、戦時中の医学者・医師による非人道的行為に真摯に向き合い教訓を活かす取り組みがなされないまま、日本は 21 世紀を迎えました。


 上記問題についての日本学術会議(以下、学術会議)における検証過程を調査するために学術会議の各種会議の議事録等の閲覧を試みたところ、以下に記すような改善されるべき状況が明らかになりました。


1.学術会議の図書目録が公開されていないこと。


2.学術会議における各種会議の議事録等は、学術会議本部にのみ収蔵されていること。


3.学術会議総会の議事録は作成されておらず、学術会議総会直前に開催された運営審議会、部会、委員会の資料は一般の閲覧に供されず、一般の閲覧に供されるのは学術会議総会の議事録の基となる議事速記録のみであること。


4.学術会議総会の議事速記録は学術会議図書館所蔵ではなく、学術会議本部事務局所蔵であること(その理由は、学術会議総会の議事速記録は一種の行政文書であるとのことでした。総会配布資料、運営審議会、部会、委員会の資料は学術会議図書館所蔵)。


5.学術会議総会の議事速記録の閲覧は事前に書面にて許可を受けなければならず、日本学術会議図書館所蔵図書の閲覧については国立国会図書館支部日本学術会議図書館利用規程に基づき事前に書面にて許可を受けなければならないこと。


6.複写サービスがないこと。


7.日本学術会議図書館の所蔵図書の写真撮影についても事前に別途許可を受けなければならないこと。


 改善されるべきと考える理由は以下のとおりです。


1. 日本学術会議図書館利用規程の第 1 条には「国立国会図書館支部日本学術会議図書館に属する図書類の利用に関する基本的事項を定め、もって図書類の利用を効率的にし、利用者に対する十分な奉仕を確保する」とその目的が記されていますが、国立国会図書館の本館や関西分館で利用者が受けることのできる「奉仕」には雲泥の差があります。


2. 日本学術会議図書館利用規程は、国立国会図書館法、国立国会図書館資料利用規則を逸脱する利用制限を利用者に行っています。(国立国会図書館法によれば、「国立国会図書館の図書館奉仕は、直接に又は公立その他の図書館を経由して、両議院、委員会及び議員並びに行政及び司法の各部門からの要求を妨げない限り、日本国民がこれを最大限に享受することができるようにしなければならない」として、この目的のために、館長は「有する情報を、国立国会図書館の建物内で若しくは図書館相互間の貸出しで、又は複写若しくは展示によつて、一般公衆の使用及び研究の用に供する。かつ、時宜に応じて図書館奉仕の改善上必要と認めるその他の奉仕を提供する」権能を有するとされています。また、国立国会図書館資料利用規則によれば、「資料の利用の方法は、閲覧、複写、図書館間貸出し、図書館等への送信及びレファレンスとする」とあり、「一般公衆で資料を利用することができる者は、満 18 歳以上の者とする。ただし、満 18 歳未満の者であっても、館長が特に認めた場合は、資料を利用することができる」とされ、日本学術会議図書館利用規程に記されているような利用者の制限、閲覧できる図書の利用者別制限はありません。)


 本会は、以上の問題が速やかに解決されなければならないと考えます。


2016 年 11 月 23 日

15 年戦争と日本の医学医療研究会幹事会

幹事長 刈田啓史郎(東北大学元教授)


連絡先:〒604-8454 京都市中京区西ノ京小堀池町 5-2 近畿高等看護専門学校

E-mail: warandmedicine@aol.com, FAX: 075(802)0690, URL: http://war-medicine-ethics.com/

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