関東軍防疫部・関東軍防疫給水部の職員表
松野誠也(明治学院大学国際平和研究所研究員)
関東軍防疫部・関東軍防疫給水部の実態を詳しく解明していくためには、これらの部隊に所属した隊員の詳細を把握していくことが必要不可欠です。そのことを示す日本軍が作成した一次資料は、故・森村誠一が1982年刊行の『続・悪魔の飽食』においてその存在を初めて世に示し、国会質疑でも政府が答弁に利用した関東軍防疫給水部の留守名簿以外に確認されてきませんでした。このため、米軍資料や元隊員の回想や証言などに依拠した実態解明が進められてきたという経緯があります。一般的な認識として、こうした重要な日本軍資料は日本敗戦時に徹底的に湮滅されたものと考えられてきたように思われます。
また、関東軍防疫給水部の隊員は1945年の時点に所属していた者を中心に検討されてきましたが、戦時中に関東軍防疫部や関東軍防疫給水部に所属した後に他の部隊に異動した者については、発見された人体報告書や陸軍軍医学校防疫研究報告に名前が記されていた者以外については、十分追えてこなかったと考えられます。
このように、基礎資料が不足していることが実態解明を進めていくうえで大きな制約となっていましたが、歴史資料の発掘を通じて、所属した隊員の詳細を把握することができる重要な一次資料が残されていることが判明しました。そこで、今回の報告では、これまでに確認することができた関東軍防疫部・関東軍防疫給水部の職員表やその他関連する日本軍資料をできるだけ多数紹介し、その意義と今後の課題などについて皆さんと共に考えてみたいと思います。
こうした取り組みは、日本軍細菌戦部隊をめぐる研究を深化させていくために不可欠な基礎的作業であると考えています。
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