2026秋の研究集会の記念講演抄録

2026/10/06

研究集会・研究会

  2026秋の研究集会(第57回定例研究会、10月31日、京都大学東京オフィス、Zoom会議室併用)の記念講演の抄録です。記念講演は10時5分から正午までの予定です。詳しい開催要領と参加申し込みはこちらのページをごらんください。


複雑化する科学のデュアルユース性と進行する軍学共同の策動-今大学に求められること

井原 聰(東北大学名誉教授、科学史・技術史)

はじめに
 安保三文書の見直しが行われる。「新しい戦い方」「反撃能力の強化」「防衛関係費の見直し」「武器輸出推進」「継戦能力の確保と組織改編」「日米指揮統制・連携の深化」「核抑止」「抑止戦略」などが、自民党の三文書見直しに関する提言を基にメディアが種々論じている。「日中ロ等の複雑な国際情勢」を枕詞に、機密情報の保護と技術流出防止を徹底しながら、「軍事研究」という刺激的な言葉をかくして、国主導で最先端技術の軍事化が静かに進行している。

1.デュアルユース論のルーツ
 科学のデュアルユース性は古代ギリシアに遡る。それはともかく科学・技術を誰が、何に用いるかが論じられるようになった長い歴史は省略するが、マンハッタン計画によって原爆が開発され、自然科学の「二面性」が問われた。今日のデュアルユース論は、1994年米国防総省のデュアルユース戦略にルーツをもつ。

2.日本のデュアルユース論
 日本ではデュアルユース論がどのように語られてきたのかに触れる。デュアルという「両用」にユースがついて「軍民両用」となり「デュアルユース」が政策用語となった。軍用という刺激的な用語を用いずに、民用を推進するかのように、軍用技術の開発を推進する用語となった。

3.進行する軍学共同研究の実像
 競争的研究費、K Program、安全保障技術研究推進制度という研究費を「自主的・自立的」に選択したはずが、安全保障に誘導されてしまう実態を述べる。特に経済安全保障推進法上の特定重要技術、防衛装備庁の研究分野、第七期科学技術・イノベーション基本計画の重点技術領域の政策と関わって検討し、加えて「特定研究開発プログラム」「オープン・クローズ戦略」という巧妙な手段で、科学・技術政策を安全保障の網の中に捉えようとする実態を示す。

4.医療・医学・医療工学の分野と安全保障
 上に述べた各種研究開発プログラムのなかに組み込まれた医療・医学・医工学分野の大学にける現状を示す。むろんここで取り上げる研究が即「軍事研究」ではない。問題は安全保障対象に取り込まれた事実をどう考えるかである。

おわりに-今、大学に求められていることは?
 ガバナンスの上からも、財政上からも追い詰められた大学がこの状況をどう跳ね返すかは、大学人が市民と共に考えなければならない。